こどもえんつくしは1978年の開園から今日まで幾度かの増改築を経て現在の園舎の姿がある。敷地周辺は山裾に広がる住宅と、古くからの里道や水路、田畑など長閑な風景が広がっている。
今回、こどもの増員や設備機器の老朽化に伴い既存園舎から給食室を移設する機会とあわせて、食という日常の一場面だけではなく、地域の方や保護者を招いて行う食事会や誕生会などの交流が生まれるダイニングホールを計画した。
ダイニングホールはがらんどうの空間ではなく、3.5mグリッドに45°の角度を振った逆末広がりの十字柱・梁を配し、水平・垂直方向への視界深度のグラデーションによって生まれる身体的距離感をつくりだすことで、森の中を歩くような自由なシークエンスを形成した。おおらかな空間でありながらも秩序と可変性をもつ空間体験がこどもたちに対して日常とは異なる創造性を与えつつ、その中に好奇心や愉しさが感じられる特別な空間となるだろう。